ミリタリーウェアを見ていて面白いのが、その一着に残されたカスタムです。
所属を示すステンシルやワッペン、部隊を象徴するプリント。
もともとは過酷な環境で使用するための実用品として生まれた服でありながら、そこに着用者自身の所属や軍歴、そして時代の移り変わりが重なっていくことで、一着ごとにまったく違った表情を持つようになります。
今回FREEWHEELERSから登場した“DECK JACKET TYPE N-1”「TOMCATS」も、まさにそんなミリタリーカスタムの面白さを存分に感じられる一着です。
しかも今回のテーマとなっているのは、1943年から1953年まで。
第二次世界大戦から朝鮮戦争へと続く、およそ10年間にわたるある男の軍歴を、一着のN-1の上で表現しています。
物語の始まりは1943年。
第二次世界大戦下のアメリカ、インディアナ州にあった海軍航空基地「NAS BUNKER HILL」。
本作では、ある海軍航空隊員がこの基地に所属していた時代を、このジャケットに刻まれた10年間の出発点として設定しています。
左胸に入る「USN」のステンシル。
そして背面には「U.S.NAVY」のリフレクタープリントと、当時の配属先を示す「BHNAS IND」のステンシル。
今回のカスタムでは、それぞれの技法までしっかりと使い分けられているのも興味深いところです。
USNとBHNAS INDはステンシル。
U.S.NAVYはリフレクタープリント。
一見すると同じようなマーキングに見えても、それぞれ異なる表現方法が使われています。
その後、第二次世界大戦は終結。
しかし、この一着に込められた物語はそこで終わりません。
時代は1950年代へ。
朝鮮戦争の時代を迎え、舞台はアメリカ海兵隊の戦闘飛行隊「VMF-311」へと移っていきます。
通称“THE TOMCATS”。
右胸に取り付けられたハート型のスコードロンパッチには、航空機と黒猫を組み合わせた印象的なモチーフが描かれています。
どこか愛嬌のある黒猫のデザインですが、その背景にあるのは朝鮮戦争期の海兵隊航空部隊。
このユーモラスな図柄と、実際のミリタリーという背景との対比も、このカスタムの大きな魅力です。
このワッペンも非常に手が込んでいます。
一般的な生地をベースに刺繍を加えるものではなく、赤いベース部分まで綿糸で埋め尽くす「畳刺繍」と呼ばれる手法を採用。
刺繍そのものに厚みと存在感があり、擦れや引っ掛かりにも強い、非常に贅沢な作りです。
そして今回のカスタムで特に面白いのが、1943年の海軍時代の痕跡を消していないこと。
左胸に残るUSNのステンシルの上から、1953年の海兵隊時代を表現するパイロットウイング章が重ねられています。
背面も同様です。
U.S.NAVYのリフレクタープリントやBHNAS INDのステンシルを残したまま、その上にVMF-311 “TOMCATS”を象徴する黒猫のモチーフが染み込みプリントで加えられています。
古いカスタムを消して、新しい所属のものへ変更するのではありません。
以前の所属を示す痕跡を残したまま、新たなカスタムをその上から重ねていく。
だからこそ、一着のジャケットの上に時間の経過がそのまま残っています。
1943年にはU.S.NAVY。
そして1953年にはUSMC VMF-311 “TOMCATS”。
約10年という時間の中で所属も時代も変わっていった、ある男の足跡を一着のN-1で見せているわけです。
もちろん、これらは単にヴィンテージのデザインを並べたものではありません。
ひとつひとつのステンシル、プリント、ワッペンが時系列に沿って配置され、その重なりによって一人の男の軍歴を表現している。
今回の“TOMCATS”が面白いのは、まさにそこだと思います。
何も知らずに見ても十分に迫力のあるカスタムですが、その意味を知ってから改めてジャケットを見ると、左胸や背中のマーキングの見え方がまったく変わってきます。
そして、ベースとなっているN-1そのものもFREEWHEELERSらしい非常に本格的な作りです。
表地には、パラフィンコーティングを施したオリジナルジャングルクロスを使用。
その内側にコットンフランネルを挟み、さらにアルパカ混ウールパイルのライニングを組み合わせた3層構造となっています。
フロントはジッパーとボタンを併用し、袖口内側にはインナーリブを装備。
冷たい風の侵入を抑えながら、アルパカ混ウールパイルによってしっかりと保温性を確保しています。
ジャングルクロスも、最初はしっかりとした硬さを感じますが、着用を重ねるほどに少しずつ馴染み、パラフィンコーティング特有のアタリや濃淡も加わっていきます。
こうした生地そのものの経年変化に、ステンシルやプリント、ワッペンの変化が重なっていく。
新品の状態でも十分に完成度の高い一着ですが、数年後にはさらに面白い表情になっているはずです。
ミリタリーウェアの魅力は、単に昔の軍服を再現することだけではないと思います。
なぜこのマーキングが入り、なぜその上から別のカスタムが重ねられているのか。
その背景まで知ることで、一着の服から見えてくる世界が大きく広がります。
1943年から1953年へ。
第二次世界大戦から朝鮮戦争へと続く約10年間を、一着のジャケットの上で表現したFREEWHEELERS “TOMCATS”。
今回も、FREEWHEELERSだからこそ作れる非常に奥深いカスタムに仕上がっています。
実際に店頭でご覧いただく際には、ぜひ左胸や背面に重ねられたそれぞれのカスタムにも注目してみてください。
今回ご紹介したFREEWHEELERS “TOMCATS” DECK JACKET TYPE N-1の商品ページはこちら。