アメカジを代表する冬の定番アウター、N-1 DECK JACKET。
これまで本当に多くのブランドがリプロダクトやアレンジを手掛けてきた一着ですが、今回C-WORKSより登場した“Scope”を初めて見た時、率直に感じたのは「こんなN-1は見たことがない」ということでした。
表地はホースハイド。そして裏地には、襟から身頃、袖裏までムートン。
単純にN-1をレザーへ置き換えたというものではなく、ヴィンテージN-1の持つ素材感そのものを、FINE CREEKブランドがこれまで培ってきたレザーの技術によって再構築した一着です。
ヴィンテージのN-1に使われている表地は、通称“ジャングルクロス”と呼ばれる高密度のコットングログラン。
経糸と緯糸の太さの違いによって生まれる独特の畝と、非常に密度の高い織りによる防風性、そして着込むことで生まれる擦れやアタリが、この生地ならではの魅力です。
今回の“Scope”で特に面白いのが、そのジャングルクロスの表情をホースハイドで表現しているというところ。
メインマテリアルには1.1〜1.2mm厚のホースハイドを使用し、その表面へ細かなピッチで型押しを施すことで、ジャングルクロスを思わせる縦畝を表現しています。
カラーも、もちろんN-1をイメージしたOLIVE。
フルベジタブルタンニン鞣しのホースハイドを芯通しで染色し、さらにオイルを多く含ませることで、一般的なホースハイドとはまた違った、しっとりと手に吸い付くような独特の質感に仕上げられています。
革表面には部分的にオイルジミや濃淡、ムラも見られます。
これも均一な人工素材ではない天然皮革ならではのものですが、今回の“Scope”ではむしろその不均一な表情が、ヴィンテージのジャングルクロスが持つ雰囲気とうまく重なっています。
そしてここから着込んでいくことで、細かな皺が入り、擦れる部分は徐々に色が抜けていく。
ジャングルクロスの経年変化をイメージして作られながら、最終的には馬革にしか出せない経年変化へと変わっていくところも、このジャケットの大きな魅力です。
そして“Scope”をさらに特別なN-1にしているのが、その内側。
通常のN-1であれば、ライニングにはアルパカやウールパイルなどが使用されます。
ところが本作では、襟だけではなく、身頃から袖裏に至るまでムートンを使用。
いわゆる毛付きの羊皮をそのままライニングとして使用した、非常に贅沢な仕様となっています。
実際に触れてみると毛並みは非常に滑らかで、見た目から想像するようなゴワつきはほとんどありません。
そして何より、かなり暖かい。
ヴィンテージN-1も冬用のデッキジャケットとして高い防寒性を持っていますが、“Scope”は総ムートン仕様とすることで、身体全体を柔らかく包み込むような保温感があります。
しかも面白いのが、これだけホースハイドとムートンを贅沢に使用していながら、実際に着てみると見た目から想像するほど重さを感じないこと。
革ジャン特有の重厚感はしっかりとありながら、ムートンの柔らかさによって身体への当たりも優しく、オリジナルのN-1とはまた違った着やすさがあります。
もちろん、N-1らしいディテールもしっかりと残されています。
袖口内側に設けられたインナーリブなど、デッキジャケットとしての機能的なディテールを残しながら、それらをオールレザー仕様の中へ自然に落とし込んでいます。
ここまで書くと、かなりボリュームのあるジャケットを想像されるかもしれません。
実際、ハンガーに掛けた状態では相当な存在感があります。
ただ、袖を通してみると印象が変わります。
着用モデル:168cm / 62kg / 38サイズ着用
N-1らしいアメリカ的なプロポーションは残しながら、総ムートン仕様でも必要以上に着膨れして見えないよう、身体に沿うバランスでパターンが組まれています。
ホースハイドの力強い表情と、ムートンによる立体感。
正面から見た時にはN-1らしい無骨なシルエットがありながら、横から見るとムートンの厚みを含めても非常に収まりが良いことが分かります。
そしてフロントを開ければ、OLIVEのホースハイドとムートンのコントラストが一気に現れます。
今回の“Scope”を見て改めて感じるのは、この発想だけなら頭に浮かぶ人はいるかもしれないということ。
N-1を全部レザーで作る。
ジャングルクロスを馬革で表現する。
さらに裏側を総ムートンにする。
言葉にしてしまえば、それだけです。
ただ、それを実際に一着のジャケットとして成立させるとなると、話はまったく別です。
ホースハイドの厚み、硬さ、オイル量、染色、型押し。 そこへムートンの厚みを合わせ、さらにN-1らしいシルエットと着心地まで成立させなければならない。
FINE CREEKブランドとして、これまでホースハイドを中心に様々な革を扱い、それぞれの特徴を理解しながら数多くのレザージャケットを作ってきたからこそ、今回の発想を製品として形にすることができたのだと思います。
単に高級な素材を使ったN-1ではありません。
ヴィンテージN-1という完成されたミリタリーウェアを土台にしながら、その魅力をレザーという全く別の素材で再解釈している。
そして実際のヴィンテージN-1とは違った経年変化を楽しめて、さらに軽く、暖かく、着やすい。
レザージャケットとしての楽しさ。
ムートンジャケットとしての暖かさ。
そしてN-1 DECK JACKETとしての無骨な格好良さ。
その3つが、一着の中に無理なく共存しています。
アメカジを長く着てきた方なら、N-1自体は決して珍しいアイテムではありません。
むしろ見慣れているアイテムだからこそ、“Scope”を初めて目にした時の違和感と驚きは大きいと思います。
こんなN-1、今まで見たことがない。
それでいて奇をてらっただけではなく、実際に冬のアウターとして着られる暖かさと着心地があり、さらにレザーならではの経年変化まで楽しめる。
個人的には、“究極のN-1”と表現したくなる一着です。
ぜひ店頭で実際に袖を通し、ホースハイドの質感、ムートンの柔らかさ、そしてこのジャケットならではの存在感を体感してみてください。